もしも「乳がん」と言われたら 〜おひとり様のための乳がんとの付き合い方〜 連載第1回

作者: ヒメノワ
  2017/11/20 更新

「乳がん」というキーワードにつきまとう不安の正体とは

みなさん、こんにちは。初めまして!
特定非営利活動法人ビーシーアンドミー理事長、古田智子と申します。

特定非営利活動法人とは、NPO法人のこと。
ビーシーアンドミーという名前は、アルファベット表記でBC&Me、Breast cancer&Me(乳がんと私)という意味。
平たく言うと乳がんの啓発団体、特に検診率を上げることをゴールとした活動を展開しています。
乳がんサバイバーである私がどんな経緯でNPOを立ち上げたのか、このあたりの経緯はもう少しお話が進んでからということで。

「乳がん」  みなさんはこのことばを耳にしたときに、まず何を感じ、イメージするでしょうか。

医師の診療を受ける
「重い病気」「死」「有名人にも乳がんの人がいる」「大変そう、かわいそう」「自分には関係ないと思いたい」など、
ある程度はっきりと言語化された感覚やイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思います。
ただ、おそらく大多数の方が、何だかよくわからない、正体不明の「もやっ」としたもの、言い換えれば「漠然とした不安」を抱くのではないでしょうか。

そもそもこうした「漠然とした不安」は、どこからもたらされるのでしょうか。
その背景には、次の3つの要因があるように考えます。


(1)メディアの報道のあり方

乳がんのメディア報道で取り上げられる乳がん患者は、殆どの場合が、病期が進みハードな状況下の方。
TVなどのメディアは「家族や友人など周りの愛情に支えられながら健気に乳がんと闘う患者像」を求め、視聴率を取れるコンテンツとして放送し「消費」しています。

実は、乳がんと告知された後ハードな状況に陥る乳がん患者よりも、
治療を一通り終えて仕事も日常も普通に過ごしている乳がん患者のほうが、数で言うと圧倒的に多いのです。

乳がんの予後を示した次のデータからも、これは明らかであり、早期発見すれば一番予後が良い、それが乳がんです。
全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2004-2007年診断症例:手術症例)(全がん協加盟施設生存率協同調査)より作図
にもかかわらず、メディアのこうした報道により「乳がん=死に至るこわい病」という乳がんイメージが社会に浸透してしまっている。
これが、多くの女性に乳がんに対する漠然とした不安を引き起こす第一の要因ではないでしょうか。
(2)情報の発信元が医療機関・専門団体

医療機関や専門団体が発信する、乳がんへの啓発情報。
その内容は、乳がん発生のメカニズムや治療の内容、患者へのケアやサポートなど、極めて医学・薬学的な見地からの情報が主体です。
 
そうした情報を必要としているのは、乳がん患者やその家族。
乳がんになっていない層にはちょっとピンとこない、難しい、そして何よりも「直接関係ない」と受け止められているのが現状。
情報は正確であっても、社会の乳がんに対する不安を払拭することには役立っていません。


(3)乳がん患者をとりまくコミュニケーションの溝

私が乳がんになって周りの人たちから受けた印象。
それは「病気のことに極力触れないようにしているなあ」でした。

おそらく「死に至る可能性がある重い病気にかかっているので聞いたら悪い」という心理が働くのでしょう。
もちろんそれは私への気遣いであることは理解しているし、その気持ちはとても有難いもの。
そうすると私も乳がんのことには触れず、他の話題で会話が進みます。

一方で、お互いがこのように口をつぐんでしまうと、
乳がんになった人がどんな社会生活をリアルに送るのか、仕事人や生活者としての体験を情報共有する機会が失われてしまいます。

本当は、「どんな治療のプロセスを辿るのか」「日常生活はどうなるのか」「仕事はどう乗り切ったのか」「お金はいつ、どのくらいかかるのか」など、
乳がんにかかっていない人にとっては知りたいことがたくさんあるはず。

そうした情報が「見える化」されるコミュニケーションが、個人間でも積極的になされない。これが3つめの背景です。

人は見えないものを恐れる

人は、見えないものを恐れます。
「乳がんと告知された後どんな社会生活を送ることになるのか」
こうした情報がもっと生活者やビジネスパーソン目線で「見える化」されれば、
多くの女性が漠然と抱く乳がんへの不安を取り除くことができるのではないか。

私がヒメノワの記事執筆を引き受けた理由は、まさにここにあります。

こんな背景を踏まえ、この記事では、自分が乳がんの告知・治療から社会生活復帰までの一連のプロセスについて、
ビジネスパーソンとしては仕事との兼ね合いを、
一方で社会生活者としては「おひとりさま」としての乳がんとの向き合い方を、
時系列で「見える化」し、読み手の皆さんと共有をしていきたいと思います。

なお、私が書く記事のトリセツはこちら。
あくまでも一介のビジネスパーソンや生活者としての体験談なので、最新の治療に関する医療情報を得たい方は、専門機関のWebサイトなどへどうぞ。
最後になりますが、一番皆さんにお伝えしたいこと。
私のように、多くの乳がん患者が、治療を経て日常生活に普通に復帰しています。
だから、「怖がらなくてもいいよ、大丈夫。安心して!」
これが、この記事を通じて皆さんに私が一番お伝えしたいメッセージです。

さて、1965年生まれの51歳、夫や子供がいない、帰る実家もない正真正銘の「おひとりさま」である私が、どのように世で言う「乳がんの告知」を迎えたか。
次回は、検査で引っかかった時点から告知までの経緯を、まずはビジネスパーソンとしての対応を中心にお伝えしていきます。

それでは次回。またお目にかかりましょう。

特定非営利活動法人ビーシーアンドミー 理事長 古田智子


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