お墓に入らなければいけないの? おひとりさまの死と相続

  2019/1/22
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ここのところよく耳にする「墓じまい」という言葉。


何となく引っかかる、という人もいるのではないでしょうか。


少子高齢化社会となって久しい日本ですが、お墓の問題は特にそれを如実に表していることのひとつでしょう。


墓じまいとは、先祖代々の墓石が建つ「お墓」の墓石を撤去し、地中に埋葬されている遺骨を取り出して永代供養墓などに移し、以降の縁者が墓地を受け継がなくすることを言います。


実家や嫁ぎ先のお墓を引継ぎ守っていくことは、自分の代までは何とかやれても、やがて自分がそのお墓に入ったら、誰が守っていってくれるのでしょうか。子供がいる人なら、その子達にお願いできないこともないかも知れませんが、そのような負担をかけることに疑問や迷いを感じる人も多いと思います。


そして、そもそも自分は絶対に先祖代々のお墓に入らなければいけないのか、または嫁ぎ先である夫の家のお墓に入らなければいけないのかと考えると、釈然としないという人もいるかも知れません。特に、夫の家のお墓に入ることについては「絶対に嫌だ」という人も少なくないと思います。

『死後の自己決定』をすることの障壁が低くなっている

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お墓に入らなければいけないの? おひとりさまの死と相続
このような、墓守りをする次世代がいないなどの理由をきっかけに、墓じまいと共に「お墓スタイルの多様化」が、この数年で急激に進んできています。


その一つとして、従来の埋葬に替わり、「納骨堂」という建物内に、複数設置された仏壇スペースの一区画を契約して遺骨を納める方法があります。


地方にある実家のお墓から遺骨を取り出し、自分の住まいの近くにある納骨堂に移動してしまえば、お参りもしやすくなり、負担が軽くなります。


そして、自分もそこに入る契約をしておけば、決められた年数が経過したのちに納骨堂側で他の遺骨とともに「合祀」するという『永代供養』をしてくれます。


利用料については、契約時にあらかじめ支払ってしまう場合が大半なので、自分の死後に誰が利用料を支払っていくのかという心配もありません。


最近では、永代供養だけでなく、『散骨』を希望する人も増えています。


樹木の根元や花畑に、パウダー状に砕いた骨である「粉骨」を撒く『樹木葬』や、海に粉骨を撒く『海洋散骨』、カプセルに封入した粉骨をロケットに乗せて宇宙へ打ち上げる『宇宙葬』なるものも登場し、これまでのお墓に対するタブー観は薄れ、もはやエンターテイメント要素さえ出てきています。


こうした、お墓に対する感覚の変化は、墓守り問題だけではなく「自分らしい自然への還り方をしたい」という、『死後の自己決定』をすることの障壁が低くなっていることがあると思われます。


加えて、古来からの日本人の神仏への信仰心や、死者の神格化という宗教観が、世代が移りゆくに連れて薄れ、寺院などとの付き合いも減少していることが影響しているからでしょう。

誰しもが、死んだ後には他の誰かの手によって弔われて葬られることは避けられない

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お墓に入らなければいけないの? おひとりさまの死と相続
また、お墓だけではなく、人が死んだ時に行われる儀式である「お葬式」にも、大きな変化が現れています。


現在の働き盛り世代が子供の頃には、葬儀の際にはいわば「家の体裁」から、住職にお布施として安くない金額を包むことや、葬祭業者に言われるがまま派手な葬式を出すことは珍しくなかったと思います。


けれど、バブル景気の終焉から日本経済の停滞を経てきたことで、華美なセレモニーの簡略化や、場合によっては葬式そのものも不要と考え、直接火葬する『直葬』も浸透してきています。


さて、これまでの儀式の簡略化・合理化が進んでいるとはいえ、実際に自分が死んだら、当然ながらそれらの儀式をも自らができるようになったわけではありません。誰しもが、死んだ後には他の誰かの手によって弔われて葬られることは避けられない事実です。


そのとき誰がそれをやってくれるのか。


ひとりで暮らしている人にとっては大きな心配事であると思います。

「死後事務委任契約書」を交わしておく

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お墓に入らなければいけないの? おひとりさまの死と相続
前回のコラム『尊厳死を選びますか』で、「尊厳死宣言」というものに触れましたが、自分の終末だけでなく、その先の弔いをどのようにしてほしいかという希望がある場合は、それもしっかりと書面に残し、実行してくれる人を確保しておく必要があります。


今現在、最も確実な方法は「死後事務委任契約書」を交わしておくことです。


死んだ後の、葬儀や埋葬の希望する方法を記し、それを実行してくれる人と契約を締結するのです。
できれば私契約ではなく、きちんと公正証書にしておくことをお勧めします。


公正証書は「公文書」になりますので、当事者それぞれに契約書が交付され、なおかつ公証役場に原本が保管されます。


例えば「お墓に入れずに海洋散骨してほしい」という希望があった場合、本人が固い意志を持っていても、それを表明しておかなければ、親族がいたら一族のお墓に葬られることになり、いなければ自治体によって無縁墓に葬られることも考えられます。


そういう意味でも、死後事務委任契約を実行する「受任者」は、業務としてそれをしている士業と交わすのが安心でしょう。


ヒメノワ世代の皆さんは「まだ死ぬような歳ではない」という方が多いと思いますが、死というのは寿命を迎える頃になってからとは限りません。


事故であったり、病気であったり、あるいは他者の手によってということもあり得ないことではないのです。


いつやってくるか誰にもわからないその時に備えて、今から準備をしておくのは決して早すぎることではありません。


科学技術や医療技術が発展しても、未だに生物の「死」は避けられません。


誰にでも訪れる死は、生の延長線上にあるものです。


それを自分らしい形で迎え、役割を終えた身体を自然に還す方法を選ぶことは、生き方を選ぶことと繋がっているのです。

行政書士・家族信託専門士 時田 美奈さん
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