おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く

  2018/5/11
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式会社PTAの静原です。

回はインドネシア・バリ島ウブドについて描かせてもらいましたが、今回もおなじくインドネシア、島は変わって、トラワンガン島でのお話。

透きとおった島の海

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おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く
ラワンガンはバリ島からスピードボートに乗って海をわたり、約1時間30分のところにある小さな島だ。そこは、『極楽島』と呼べるようなところだった。


候は年がら年中あたたかく、海は至極の美しさ。ゆったりと流れる時間。大パノラマで見ることのできるオレンジ色の夕陽。訪れた観光客は島に魅了され、長期滞在を決める者も後を経たないそうだ。

インドネシア・トラワンガン島

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おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く
ンドネシア・トラワンガン島


内は自動車・バイクは禁止され、許可されているのは自転車と馬車のみ。


んな幸せに満ちた楽園の地で、たったひとり、罪悪感にさいなまれる女がいた。それは私である。前回の記事に書いたように、旅へ出かける直前に初の脚本執筆の仕事が急遽決まり、仕事をかかえて旅先へやってきたのだ。キャンセル料のことを考えると、とてもじゃないけど旅を中止にすることもできない。だけど私は新人作家。大御所じゃあるまいに。


ンドネシアの孤島で過ごす日々は、苦悩に満ちていた。


でマティーニを呑む余裕もない。いい男のビキニ姿をながめ、引き締まった尻を脳内ストックする時間もなければ、執筆相談をする話相手もいない。叫べども叫べども、誰にも届かない悲痛の声。地獄。孤独の極み。ここは地球ではない!誰もいない真っ暗な宇宙だ!たったひとり、宇宙へ放り投げられたような、このうえない孤独感を味わった。


直なところ、インドネシアは仕事とプロデューサーのことで頭がいっぱいだった。プロデューサーに嫌われたらどうしよう。今後、仕事をもらえなくなったらどうしよう。これまで、あんなに誰かのことを考えたことはなかった。プロデューサーは女性なのだが、全身全霊をかけて服従したいと思った。帰国したら首輪をつけて拘束してくれ。脱稿するまで縛ってくれ。靴も舐める。なんでもする。もはや奴隷のようであった。高ぶる感情を抑え、シンプルなラブメールを出しておいた。「連絡をいただいたらすぐに反応します」


約しておいた部屋は、運よく快適だった。まわりの雑音がまったく聞こえない離れコテージに15Mプールと40畳ほどのバルコニー。壁にはたくさんのバリ絵画が飾られ、20人ほどが座れる巨大なソファにゴージャスな晩餐会がひらける長いテーブル。ソファに腰をかけてみると、そのまま眠りこけてしまいそうなほどの座り心地だった。わくわくしながら部屋のドアを開けると、綺麗に磨かれた大理石の床が広がり、部屋のすみには陶器の花瓶にお花が活けてある。ほのかに花の香りがただよっている。ふんわりとしたやさしい香りが鼻腔を通り抜け、凝り固まった脳をときほぐしていく。大きく息を吸って、ハァ。優越の吐息をもらした。


とりで眠るには広すぎるベッドに飛びこんでみると、からだがほわっと宙へ浮いた。室内の扉を開けると、でんぐり返しを3回連続でできそうなほどだだっ広いバスルームがある。ブルガリのアメニティが律義にならべられ、バスタブの上に置かれたタオルのうえに薔薇が一輪そえられている。ここでもまたもや、ハァ、歓喜の吐息。

ゴージャスなバスルーム

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おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く
れで一泊5000円ほどなので、神は私を見放したわけではなかった。真っ暗な宇宙から地球へ舞い戻ってくることができた。


屋の中にも椅子と机があったので、執筆に勤しんだ。ミンティアを口にほうばり、ユンケルをガブ飲み。ボルタレンテープを肩と首、眠気が襲ってこないように額と頬に貼って、気合いはばんたん。

働く女の必需品

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おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く
れくらい時間が経っただろうか、「ニャーン」と猫の鳴き声が聞こえた。


屋の外だ。ひさしぶりにキーボードタッチ以外の音を聞いた。ドアを開けると、猫の家族がつぶらな瞳で私を見つめていた。ポテトチップスを小さくちぎって食わせてやると、「ニャーン、ニャーン」と撫で声をあげて、ふわふわとした毛をスリスリと足首になすりつけてきた。抱きかかえて猫に頬ずりした。ふと視線をそらすと、世界はオレンジ色に染まっていた。まんまるい夕日が海の上にぼんやりと浮かんでいる。猫はするりと腕からぬけると、スタスタとバルコニーを歩いていった。あとを追ってバルコニーの手すりから外を見ると、島のメインゲートで観光客が音に合わせて踊っていた。いくつものネオンがチカチカ輝いては消えて、せわしなく発光している。数時間前の私であれば、うらやむ気持ちで溢れていたであろうが、もう、みみっちいことは考えなくなっていた。


端康成、江戸川乱歩、太宰治、サマセット・モーム、アーネスト・ヘミングウェイ、レン・デイトン。彼らも、旅先のホテルに滞在して執筆三昧に明け暮れている。まとまった文章を書くために、思考が途切れないように世俗と断絶し、自分を追い込んでいた。私は彼らに到底及ばない新米作家なのではあるが、彼らが生きていたときに経験したことを、同じことを異国の地で体験した。これは私にとって最高の幸福である。憧れの人たちと似たような経験をできることは、喜ばしことだ。


様は最後の最後に幸福をくださった。トラワンガン島が私に教えてくれたことは、「心の明暗は気持ちの持ち方次第でどうとでもなる」ということ。


点を変えれば地獄も極楽へ変わる。オセロの石を黒から白へひっくり返すようにすべての物事はくつがえすことができる。


くない。こういった作家合宿のような旅もなかなかいい。部屋にこもりっきりでひとつのことに没頭するのも贅沢だ。


つかこの極楽島へ訪れるときには、一冊の本を持って、猫とたわむれながら読書をしよう。せわしなく動きまわることだけが、旅ではないのだから。
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おひとりさま 仕事を抱えてインドネシア トラワンガン島へ行く
写真・文:静原 舞香(株式会社PTA所属、脚本家)
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