おひとりさまの死と相続 対策編② 尊厳死を選びますか

作者: ヒメノワ
  2018/2/9

前回のコラムで、孤独死をしないための対策についてお話をしました。いま現在、おひとりさまであっても、あるいは家族と一緒に賑やかに暮らしていても、誰もが皆、死ぬときは「ひとり」です。その瞬間に周りに看取ってくれる人がいたとしても、当然ながら一緒に死んで行くわけではありません。


かけがえのない自分の人生を綺麗で自然なかたちで締めくくりたいと思うのは誰もが願うことですが、現代日本の医療環境では、「生かす」ために本人の意思に関わらず延命することが原則となっているのが現状です。
 

それを受けてか、自分の生き方を自分で決める「自己決定」と同様に、死に方を自分で決める「死の自己決定」という意識がここ数年で台頭してきています。

自分で死に方を決めるために~尊厳死~

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いまや長生きがリスクです。長生きしても満足に働けなければ意味がない。しかも、自分とさほど年が離れていない人の訃報。あんなに元気だった人が死んだらそれっきりになってしまう・・・身近に迫る「死」の問題について、専門家の意見を交えながら語るジャンルです。
それを代表するもののひとつが「尊厳死」。


これは、現代医学では回復の見込みがなく、末期状態の病状になった場合に、過剰な延命処置をしないようにあらかじめ意思表示をしておき、人としての尊厳を保ちながら自然な形で迎える死のことを言います。


よく似た言葉で「安楽死」というものがありますが、これは治療を施しても回復せず、患者がその身体的苦痛に耐えられないときに、本人または家族等の明確な意思表示の元に、薬剤投与や生命維持装置の取外しなどの積極的な行為によって死に至らしめることです。


これまで全国でわずかに数件の例がありましたが、いずれも裁判では純然たる安楽死と認められる要件を満たしていないとして、措置を施した者が嘱託殺人などの罪に問われる結果となっています。

尊厳死の意思を表示するために

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おひとりさまの死と相続 対策編② 尊厳死を選びますか
では、「尊厳死」を実現するためには、どのようなかたちでその意思を記しておけば良いのでしょうか。


まずは、家族や近親者がいるならその人たちに自分の意思を明確に伝えておかなければなりません。それは口頭だけではなくしっかりと書面に残す必要があります。いざ緊急の様態になった時に、その書面が本人の意思表示の証拠物となること、その意思を汲む決断を迫られる家族や近親者の精神的負担を軽減するためです。


エンディングノートに記入しておいたり、便箋にしたためておくのも良いのですが、できればそのような私文書ではなく、公文書にしておくべきでしょう。


尊厳死を望む旨の文面を作成して最寄りの公証役場に持ち込むと、公証人の監修のもと「尊厳死宣言公正証書」という書面を作成することができます。公正証書という公文書を残すことにより、尊厳死というものに対する本人の強い意志があることを知らしめる大きな根拠となるはずです。


ここでひとつ注意しなければならないのは、同じ公正証書でも「公正証書『遺言』」に尊厳死を希望する旨を書いても意味が無いということです。当然のことながら、遺言書は書いた本人の死後に効力が発生するものですから、そこに「死に方」の希望を書いても実現するのは不可能というわけです。


さて、死ぬときは皆ひとりで死んで行くのですが、この尊厳死の意思表示を実現させるためには、先述したように延命措置をしないでほしいことを医療者等に「伝える誰か」がいることが必要になってきます。
家族や近親者がいないか、いても疎遠だったり頼れないというおひとりさまの場合は、どうしたら良いのでしょうか。

おひとりさまの尊厳死

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おひとりさまの死と相続 対策編② 尊厳死を選びますか
今後ますます増加が予想されるおひとりさまに対し、自治体やNPO団体、士業法人などが、見守りサービスなどのかたちで孤独死を防止する機能を持つ仕組みを提供し始めています。


それらのコミュニティの見守りサービス提供者に対し、自分の意思と尊厳死宣言の存在を伝えておくのも有効な方法のひとつです。


また、尊厳死宣言公正証書の他にも、その意思を多くの人に知っておいてもらう手段として「日本尊厳死協会」の『リビング・ウィル(「終末期医療における事前指示書」)』というものがあります。延命措置を拒否する旨の様式に記入したものの一部を協会が保管し、もう一部を会員証とともに自身で持ち歩くという方法を提唱しています。


ひとりで倒れて医療機関に搬送された時に、身元を確認する際にその書面が発見されるように、保険証や免許証と共にしておき、医療者等にその意思が伝わるようにしておくのです。この協会への入会希望者は年々増えており、小泉元首相などの有名人も多く入会しているそうです。


※日本尊厳死協会ホームページ  http://www.songenshi-kyokai.com/

尊厳死を選ぶことは責任を伴うこと

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おひとりさまの死と相続 対策編② 尊厳死を選びますか
尊厳死を選ぶことは、自分らしく生きて自分らしくその幕を閉じることと言えますが、本人はそれを望んでいたとしても、家族や周りの人がその意思を汲んで決断するときや医療者がその意思の根拠に従って医療行為を行わない選択するときは、大きな葛藤とリスクを負うことを心に留めておくべきでしょう。


自由を選択するには責任が伴います。まして、死に方の自由を選択するには、関わる人達に対する配慮と大きな責任が伴うことを忘れるべきではありません。


次回は、死に方を選んだその先に来るものである、葬儀やお墓のことについてお話をしたいと思います。おひとりさま向けの多様なスタイルや従来の価値観から変容している現代の葬祭事情についての選択肢をご紹介します。


行政書士・家族信託専門士 時田 美奈


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